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ろう学校における「ろう通訳」の実践

2021年6月発行 全聴教会報第93号掲載

執筆者 埼玉県立特別支援学校大宮ろう学園 幼稚部教諭 戸田康之

埼玉県立特別支援学校大宮ろう学園幼稚部教諭として勤務している戸田康之と申します。教員の他に兼職としてNHK手話ニュースキャスターをやっています。キャスターになって13年目になります。ニュース原稿の日本語の文章を、的確な日本手話に翻訳し、手話ニュースを見る方々に分かりやすく伝えることを大切にしながら、自分の力量を磨く日々です。このキャスターとしての翻訳の実践の積み重ねが、日本手話と日本語の言語の理解を深め、自分の中で言語観が深まったと感じます。その事が、現在の「ろう通訳」の実践に大きく活かされているように思います。

通訳団のメンバーにろう教員が入る

埼玉県には大宮ろう学園と坂戸ろう学園の二つのろう学校があります。平成28年度から、それぞれの学校に1名ずつ専任通訳者(手話通訳士)を設置しています。教育委員会への要望を長年にわたって積み重ねた結果、やっと実現しました。また、昨年度からは坂戸ろう学園の教頭にろう者が赴任したので、坂戸ろう学園の専任通訳者を臨時でさらに1名増やしました(週10時間勤務)。大宮ろう学園の専任通訳者は1名のままであり、専任通訳者の負担が大きい状況です。打ち合わせや会議の通訳、保護者面談の通訳、校内研修の通訳、入学式や卒業式などの行事の通訳、手話をまだ知らない新転任教員の授業通訳など多岐にわたっています。全体の会議や研修、講演などの通訳では、専任通訳者と校内の聴者教員(ほとんどは手話通訳士や地域登録手話通訳者の資格は持っていない)がペアを組んで通訳を担当します。専任通訳者の数を増やし、よりよい通訳体制、また働きやすい環境を作るためにも、今後も教育委員会に要望を出し続けていきたいと思います。

校内の係の中に、「通訳団」という係があります。ろう学校勤務経験3年以上の聴者教員の中で、会議や行事などの通訳を担ってくれる人を募り、通訳団の係に入ってもらいます。今まではずっと聴者教員のみで構成されていましたが、今年度は初めて「ろう通訳」として、私を含むろう教員2名が通訳団に入りました。聴者とろう者で構成する通訳団となりました。全国のろう学校にも、通訳団という係はありますが、ろう教員が通訳団のメンバーとして入るのは、大宮ろう学園が初めてのことです。校内の情報保障委員会で「ろう通訳」を実施したいと提案してから、実現するまで5年かかりました。実現するまでには、聴者教員の反発やろう通訳に対する誤解、日本手話に対する偏見もあり、簡単な道のりではありませんでした。

ろう学校の中で、何故「ろう通訳」を実施する必要があるのかを、時間を遡って背景も含めて説明していきたいと思います。

手話が出来る校長先生

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